横浜市南区の親子の居場所「さくらザウルス」

「はぐはぐの樹」の遊び場

NPO法人さくらザウルスは、2012年から横浜市南区からの委託を受け、横浜市の18区に1~2カ所ずつ設置されている地域子育て支援拠点の1つ「はぐはぐの樹」を運営しています。また、「横浜市親と子のつどいの広場事業」の補助を受け、蒔田と六ツ川の住宅地でも、「さくらザウルス蒔田ひろば」「さくらザウルス六ツ川ひろば」を運営しています。3つの施設には、子どもたちがおもちゃや絵本で遊べるスペースが設けられ、赤ちゃんと家族がスキンシップを図るためのイベントや親同士が意見交換を通して交流できるプログラムなどが開かれています。
10年以上に渡り横浜市南区に暮らす親子の居場所を見守り続けてきた、さくらザウルス理事長の横田美和子さんに、子育て支援拠点の運営について聞きました。

母親たちがつくってきた集いの場

さくらザウルス理事長:横田美和子さん

さくらザウルスの活動は、2004年に開設した「さくらザウルス蒔田ひろば」から始まりました。南区の子育て事業の一環としてボランティアからなる運営委員会が運営していましたが、開設から2年後に働いていたボランティアの人々が中心となって、NPO法人として独立します。

当時の横浜市は、人口増への対応に追われていて、子どもに対する施策が遅れていました。「何もないと嘆いていても仕方がないので、自分たちの手で子育てしやすい環境をつくってきました。現在は、それが徐々に事業化されてきています」と、横田さんは語ります。
「南区は、人口密度が高く都市化されているものの、下町の人情が残る、気さくで温かい土地だと感じています。その反面、一人親世帯や、経済的に厳しい家庭の割合が高めです」と、横田さんは長年住んできた住民の視点からまちの特性を語ります。
また、この5年で見られる子育て環境の変化について「出産後すぐに就労したり、仕事に復帰したりする人が増え、子どもが生まれてから愛着を形成する大事な時期にのんびりと暮らすことができない親子が多くなっている」と指摘します。経済的な理由や、積み上げてきたキャリアを手放したくないという想いで、仕事を続ける女性が増えるなか、育児と仕事の両立の負担の重さに苦しんでいる人もいます。「育児と仕事の両立は、両親だけでは難しいことです。だからこそ、地域の人々の手を借りることが必要です。しかし、子どもができたからといって、すぐに周りの人と信頼関係が築けるものではありません。地域に信頼できるつながりをつくる応援をするのが私たちの役目です」と、横田さんは現在のさくらザウルスの存在意義を語ります。

子どもも大人も集う交流の場「はぐはぐの樹」

「はぐはぐの樹」の子ども図書館

さくらザウルスが運営する、地域子育て支援拠点「はぐはぐの樹」は、京浜急行弘明寺駅に近い弘明寺商店街にあります。遊び場には、さまざまなおもちゃや絵本が揃っていて、情報コーナーには、子育て情報のチラシやパンフレットが置かれています。約3900冊にのぼる蔵書は、子ども用の絵本や紙芝居から、子育てに関する大人向けのものまであり、貸し出しもしています。

また、交流スペースでは、絵本や紙芝居の読み聞かせ、助産師を招いたグループ相談のプログラム、出産前の沐浴の練習や先輩ママたちとの交流ができるプレママ会など、さまざまなイベントが催されています。更に、双子・三つ子育て、外国と関わりのある方、アラフォーママ、食物アレルギーをテーマにした「しゃべリング」や、ダウン症児の子育てをテーマにした「おしゃべりサロン」など、当事者同士が話し合える場の提供にも力をいれています。
ほぼ毎日通っている母親は、「来れば必ず知っている顔に会えるし、居心地がいいです。来れば来るほど、知り合いも増える」と、教えてくれました。一方、ときどき利用しているという母親は、「子どもの居場所でもあるけれど、子育ての先輩から話を聞いたり、スタッフに相談にのってもらったり、自分自身の居場所にもなっている」と言います。
さらに、地域の子育て支援事業に関する情報を提供する専任スタッフ「横浜子育てパートナー」の支援を受けられるほか、地域の住人同士で、子どもを預けたい人・預かれる人をつなぐ「横浜子育てサポートシステム」を利用することができます(事前登録が必要)。

「はぐはぐの樹」は、2017年10月から2018年9月にかけて、1日平均54.6組の親子が訪れています(※)。

※出典:「はぐはぐの樹」利用者データより

さくらザウルスが必要としている支援

「さくらザウルス六ツ川ひろば」に併設されているチャリティショップ

「さくらザウルス蒔田ひろば」と「さくらザウルス六ツ川ひろば」は、寄付された子ども服や日用品を販売するチャリティショップがあり、その収益はさくらザウルスの運営費に補充されています。
さくらザウルスは、横浜市からの委託や補助を受けて、施設の運営をしていますが、実際には、「常勤・非常勤のスタッフの働きにもっと報酬面で応えたい状況や、人手不足の問題がある」と言います。そこで、チャリティショップの物品の寄付を募ったり、有料プログラムの割引や絵本の貸し出しなどの特典のある会費制「さくらザウルス応援メイト」を募集したりと、資金集めにも力を入れています。
また、「はぐはぐの樹」では、地域内の地区センターなどを利用して月に2回行われる“おでかけ広場”で準備や片付け、親子の見守りを手伝う地域の方を、「さくらザウルス蒔田ひろば」「さくらザウルス六ツ川ひろば」でも、親子見守りのボランティアを探しています。

さまざまな形で長年、地域に根差した子育て支援を続けてきた横田さんは「生活の一部である子育てには、そのときどきの社会情勢が反映されています。さくらザウルスでは、分野を越えたサポート体制が整っています。まずは身近な窓口として頼ってもらいたい」と話しています。

南区地域子育て支援拠点「はぐはぐの樹」

【交流スペース】
〒232-0067 神奈川県横浜市南区弘明寺町158 カルムⅠ 2階
TEL&FAX.045-715-3728
URL: http://www.haghagnoki.jp/

寄付・活動についてのお問い合わせ

特定非営利活動法人さくらザウルス
〒232-0044 神奈川県横浜市南区榎町1-1-5 フレア吉原1F
TEL:045-711-4666
URL: http://www.sakurazaurusu.jp/

 

本田真弓 プロフィール

日本舞踊にダイビング、ワインやハーブの勉強に、読書、音楽鑑賞などなど。とにかく、多趣味な主婦。地元に暮らす人たちの想いを伝え、人と人を繋ぐような情報を発信できるライターになるのが夢。

【取材後記】
刻々と変化していく生活環境の中で、横浜市各区に置かれている子育て支援拠点を必要としている人たちがいます。自分たちの抱える課題や悩みを話せる場を通して、地域に住む人たち同士がつながり、助け合えることを、わたしも望んでいます。