アートによって個性を持ったおもしろい場所をつくり、まちの再生につなげたい~NPO法人「黄金町エリアマネジメントセンター」の山野真悟さん


「かなチャリ公開トークvol.7『アートによるまちづくり』」では1月9日、NPO法人黄金町エリアマネジメントセンター(横浜市中区)を訪問。事務局長の山野真悟さんに、「アートによるまちづくり」をテーマに開催する「黄金町バザール」をはじめ、神奈川県の新しい公共支援事業の一環として展開している石巻市の「日和アートセンター」の事業、寄付集めの工夫、まちづくりと共感の広げ方について話をうかがいました。
――美術家の山野さんが、「NPO黄金町エリアマネジメントセンター」に関わられたきっかけは何ですか?
2005年に、横浜トリエンナーレのキュレーターとして1年間滞在したのが最初の横浜との接点でした。その後2007年に、「もう一度横浜に1年間戻ってこないか」と言われて。そこで、まちの再生を視野に入れたアートフェスティバル「黄金町バザール」に関わることになりました。バザールの開催中ですが、地元の方に「イベントが終わったらどうするのか」、「もっと継続的なまちづくりじゃないと意味がない」と言われました。「もうしばらく残らないか」と地元の方に説得され、そのまま今に至る、です(笑い)。
――初めて黄金町を訪れた時、どんな印象でしたか?
不思議な町という印象でしたね。ほとんど人は歩いていないし。当時、横浜市と中区が造ったスッテプワン、「BankART桜荘」と横浜市大鈴木ゼミと地域のみなさんの交流拠点「Koganex-Lab.」だけが活動していて、あとは中をうかがうことが出来ない小さな建物が並ぶゴーストタウンのようなエリアでした。ただし、違法飲食店の横浜市による借り上げや、高架下に新しいスタジオを作るという計画はすでに進行していました。
2008年、「黄金町バザール」を開催し、全国から大きな注目を集めました。この成果をふまえて、翌2009年、「アートによるまちづくり」をテーマに、NPO組織が発足しました。
――「NPO黄金町エリアマネジメントセンター」とは、どんな活動をしている団体なのでしょうか?
昔、違法飲食店と呼ばれた店舗が集中していた黄金町エリアを中心に、アートによるまちの再生に取り組んでいます。アートイベント事業に加え、アーティストをはじめとする創造的な職業の人たちにNPOの管理施設を仕事場として貸し出す事業や、地域のみなさんと連携しながら、「経済的な再生」と「安心安全のまちづくり」を目指して日常的な活動を進めています。また、この地域では多くの人たちがまちづくりに関わっています。地域のみなさん、行政、警察、大学、企業、そしてもちろんこの街の新しい担い手として参加して来た人たちの声を反映し、その調整役として機能することが黄金町エリアマネジメントセンターの重要な仕事です。

――黄金町バザールは、昨年秋にも開催されたようですが、どんな取り組みなのですか?
横浜市中区の初音町・黄金町・日ノ出町地区(初黄・日ノ出町地区)で地域のまちづくりに取り組む「初黄・日ノ出町環境浄化推進協議会」と「黄金町エリアマネジメントセンター」が共同で開催しているアートフェスティバルです。「まち」という日常の空間を舞台に、2008年から毎年秋に開催し、国内外のアーティスト、キュレーター、建築家を招聘してきました。バザールの開催をきっかけに、若手クリエイターの実験の場としてまちを開放し、地域コミュニティに新たな可能性が生み出されることを目指しています。昨年も、33組のアーテイストや建築家が参加し、まちの景観やまちの活動と関係を結びながら展開するさまざまなアートの形を紹介しました。

――年間の事業規模と収益の柱について教えていただけますか? また、独自の資金集めについて、どう考えていますか?
年間の総事業費は約1億2000万円くらいです。収入は、横浜市の補助金が約7割程度。あとはいろいろな事業収入をかき集めています。つまり、◆行政との連携事業◆独自事業◆受益者負担◆寄付などです。
今後NPOの事業全体を拡大していくためには「アーティスト・イン・レジデンス」の一部を収益事業へ転換していくことなど、新しい方向性を打ち出していく必要があると思います。また、会費収入として、志があってわれわれの主旨について賛同してくれる賛助会員を募集するとか、新しいシステムとして、クラウドファウンディングも活用したりして資金集めを行っていくこともあるでしょう。
――今後取り組みたい活動は? また、将来、山野さんが描くまちの姿とはどのようなものでしょうか?
今考えているのは、アートセンター的な機能ですね。これは、アーティストのために作るのでなく、アートを必要とする人のための入口みたいなもので、アートセンターという媒介者を持つことによって、地域の経済を担う人とアートが連携して、その相乗作用で、地域が復活するというイメージを持っています。今、初黄・日ノ出町では人口が増えているそうです。マンションの増加がその大きな理由だと思いますが、マンションが建設出来るほどこの地域が安全な場所になったと見られるようになったのはこれまでの活動の成果のひとつだと言えますが、反面でマンションの増加はどこの街とも変わらない均一な風景をもたらすかもしれないという危惧も持っています。少なくともこの街はそうでなく、はっきりとした個性を持ったエリアとして、国際的にもおもしろいといわれるような場所として評価され、それがまちの再生につながればいいと思っています。
■ゲスト:山野真悟さん(NPO法人黄金町エリアマネジメントセンター事務局長)
1950年福岡県生まれ。山野真悟事務所主宰。1970年代より福岡を拠点に美術作家として活動。1979年IAF芸術研究室設立。1990年より街を使った美術展「ミュージアム・シティ・天神」をプロデュース。「まちとアート」をテーマに、企画・ワークショップ等を多数手がける。2004年より(財)福岡市文化芸術振興財団「ギャラリーアートリエ」を企画運営。横浜トリエンナーレ2005キュレーター、2008年より黄金町バザールディレクター。
【関連リンク】
▽アーティスト支援チャリティ展」
http://koganecho.net/contents/event-exhibition/event-exhibition-567.html
▽黄金町エリアマネジメントセンター
http://www.koganecho.net/
▽日和アートセンター
http://www.facebook.com/hiyoriartcenter