若者に「居場所」を提供し、「自立」の機会を与える 「コロンブスアカデミー」

事務局長の福島恭子さん

「不登校や引きこもりで、就職などの社会的な自立が難しい」。そんな若者があなたの周りにいませんか?認定NPO法人コロンブスアカデミーは、その若者に「居場所」を提供し、「自立」の機会を提供してくれるかもしれません。
コロンブスアカデミーのホームページを見ると、いかにも楽しそうな団体で、乳幼児から小学生・中学生・高校生、さらには青年に至るまで、若者たちが、絵を描いたり、ピアノを弾いたり、飛び跳ねたり、食事を作ったりする写真が目に飛び込んできます。「おもしろい子(個)を育てる、という考えで、その子が持っている本来の個性を生かし、人と違う点を魅力的なものとして育てていきたい」と語る、事務局長の福島恭子さん(42)に、コロンブスアカデミーの活動にかける思いと将来の展望などについて、お話をうかがいました。

「子育てを支え合う地域社会」づくりが、設立の目的

コロンブスアカデミーは、2000年2月に設立されました。不登校やひきこもりなど生きづらさを抱える青少年に、さまざまな機会・居場所を提供することで、自己肯定感を育て、社会的自立を目指すステップを提供しています。また、そうした「人育て」の循環を育むことで、支え合う地域社会づくりも目指しています。
当初は、不登校や思春期の相談支援を中心に活動していましたが、時代の変化に合わせ、現在は乳幼児期から学齢期・思春期・青年期までの途切れのない支援を事業として展開しています。
現在、スタッフ21人と、1か月あたり30人ほどのボランティア(大学生からシニアまで)の協力により、この活動を行っています。

新しい事業の展開、「子ども食堂」とは?

こうした中で、2020年3月頃から検討を始め、同年6月から、新しい事業として「子ども食堂」をスタートしました。
新型コロナウイルス感染症が広がり始め、子ども達にも大きな影響が出てきていると誰しもが感じ始めた時期に、なぜこのような事業を立ち上げようとしたのでしょうか?

「子ども食堂」に集う若者たち

福島さんは「今一度、私たちがするべきことは何かを話し合いました」と言います。新型コロナウイルス感染症の拡大は、学校が長期休業になるなど子どもたちに大きな影響を与えましたが、在宅ワークの増加・経済状況の悪化など親の仕事にも影響がありました。福島さんは「見えにくくなっているが貧困と孤立の問題が増えている」と指摘します。

そこで、コロナ禍の今だからこそ、見えない貧困や環境の変化などがもたらす3つの「孤」(こ)ーすなわち「孤食」「孤立」「孤独」ーの解消に取り組もうと、子ども食堂の実施を決めました。子ども達が温かい食事をとれるだけでなく(孤食の解消)、地域で相談できる大人とつながり(孤独の解消)、社会から排除されることを防ぐ(孤立の解消)ことが目的です。
同じK2グループの財団法人がすでに2009年6月、自立を目指している若者の就労支援の一環として、会員になれば250円で食事ができる「250にこまる食堂」を、本部ビル1階(磯子区東町9・根岸駅徒歩3分)に開設していました。
「子ども食堂」は、この「250にこまる食堂」とコラボする形で実施しているため、正式名称は「子ども食堂250にこまる+プラス」と言います。
「子ども食堂」は、①毎週金曜日の17時〜19時まで、②利用対象者は、あらかじめ登録した小学生・中学生・高校生に限定、③登録した子どもは無料ーなどの特色があります。
また、「子ども食堂」では予約すれば相談も受けられます。これは「悩みや問題を抱えた青少年が孤立しないように、相談を受ける場を作ることが必要」との考えから、設けられました。 この相談には、社会福祉士・精神保健福祉士・キャリアカウンセラーなどの資格を持ったスタッフが対応しています。

「支援される側」から「支援する側」へ

「子ども食堂」で調理するスタッフ

「子ども食堂」に登録している人数は、現在のところ30人程度で、まだ発展途上の事業のため、今後どう展開させていくかは手探り状態です。
ただ、「子ども食堂」には、「大きな役割がある」と福島さんは言います。1つ目は「多様な人と関わる経験ができる」点、2つ目は「困ったときに相談することができる場所として、若者支援につなげることができる」点です。
そして、もっと大事な役割として、福島さんは「子ども食堂が、そこに集まる若者にとって、支援される側から支援する側になる機会につながる場所になりうる点」を挙げました。現在、「子ども食堂」に携わっているスタッフの中には、かつては「支援される側」だった若者もいます。
子どもの貧困・孤立を防いでいくことは、将来的に「若者の孤立を予防することにつながる」と福島さんは考えています。不登校や思春期の相談支援を中心に活動していた従来の若者支援のかたちに加え、「子ども食堂による若者支援」という新たな事業の価値は、そこにあるようです。

「子ども食堂」で提供される食品等

寄付についての考え

こうした活動をしていくうえで必要な資金はどのように調達しているのしょうか。コロンブスアカデミーの資金調達体制(収入)は、委託事業・助成金・事業収益・会費・寄付金の5本柱で成り立っているといいます。
2020年度実績によると、横浜市からは、地域ユースプラザ・青少年の地域拠点・親と子のつどいの広場・寄り添い型生活・学習支援の各事業に、神奈川県教育委員会からは、子どもの居場所づくり推進委託事業を受託しています。また、助成金は若者応援基金新型コロナ緊急助成金など、さまざまな制度を活用しています。事業収益は、学童保育・子育て支援・居場所づくり・相談などの事業実施による収入となります。会費は、活動を支えるNPO法人会員から受け取る収入で、正会員・賛助会員・特別会員の種別があり、それぞれ会費の金額が異なります。

NPO法人の活動を維持していくには、会員からの会費や事業活動を通じて得る収入などで資金を確保していくほかに、外部からの寄付を募ることも必要となります。コロンブスアカデミーも例外ではありません。
コロンブスアカデミーでは、活動に賛同する市民・法人から広く寄付を募っています。集まった寄付金は、地域社会の中で子ども・若者が活躍する機会を創出するための資金として活用しています。

(取材・文:横山豊久)

寄付・活動についてのお問い合わせ

認定NPO法人 コロンブスアカデミー
理事長:渡辺 克美
所在地:横浜市磯子区東町9番9号(〒235-0005)
TEL:045-761-0167
FAX:045-751-9460
電子メール:columbus@k2-inter.com
URL:http://npocolumbus.or.jp/

横山 豊久(よこやま とよひさ)プロフィール

生まれは千葉県市原市(鶴舞)。乳ばなれしないうちに東京都千代田区(麹町)へ転居。その後杉並区(方南町)、新宿区(高田馬場)、町田市(玉川学園)、神奈川県川崎市(武蔵新城)などを転々とし、結婚して東京都台東区(雷門)へ。現在はようやく神奈川県三浦市(三浦海岸)に落ち着きました。
定年退職後、神奈川新聞の姉妹紙『横須賀日日新聞』(現・『創年日日タイムズ』)の市民記者としての取材活動の延長で、県の市民レポーターの活動にめぐり合いました。   昨年5月に、「横須賀日日新聞」で連載した「花散歩」の記事を1冊の本にまとめ、『でかけてみよう!よこすか花散歩』として自費出版しました。趣味は、映画鑑賞・読書・スケッチ・詩吟・尺八等々。

【取材後記】

この取材を通じて、福島事務局長が熱く語っていた、「若者をひとりにさせないこと、若者を支援する人がひとりで抱え込まないことが大事だ」という言葉に、若者支援の難しさを感じるとともに、若者支援が、高齢者支援と比べて世間の理解を得ることの難しさを痛感しました。