リサイクルで海外支援、善意で支える笑顔あふれる居場所「WEショップ」

1998年、神奈川県の厚木市に住む女性たちが、自分は使わなくなったものの、まだ価値のある物を無償で寄付してもらい、それを販売した収益で海外を支援する活動を始めました。その活動の拠点となるお店が厚木市役所の裏手にあります。オレンジ色の看板が目を引く「WEショップ厚木」です。このチャリティショップを運営する「認定NPO法人WE21ジャパン厚木(以下、WE21厚木)」の小川秀代代表理事に話を聞きました。

WEショップ厚木

使い捨ての意識を変えるお店を

始まりは、25年前の1996年、生活協同組合や地域政党「神奈川ネットワーク運動」に参加していた女性たちが、イギリスのオックスファム・インターナショナル(以下、オックスファム)※1を視察したことでした。オックスファムは、第二次大戦下のイギリスで始まった活動で知られており、現在も貧困と不正を根絶するための持続的な支援活動を90カ国以上で展開しています。視察参加者たちは、オックスファムのような組織を神奈川県内につくりたいと考え、チャリティショップ運営のヒントを学んできました。

そして立ち上げたのが「WEショップ厚木」です。目的は、リユース品を販売して得た収益から支援金を生み出し、アジアを中心とした途上国支援をすることでした。最初の支援は、日本で母国のために活動するカンボジア女性への支援でした。

お店を始めるにあたり、衣類や雑貨等の無償のご寄付と活動に参加するボランティア募集のチラシを作成し、初めはとにかく知人や友人等に声をかけ続けました。この仕組みが地域に受け入れられるのか不安で「3カ月やって赤字だったら閉店もやむなし」と覚悟していましたが、「もったいない」の気持ちで寄付品をお持ち下さる方たちやボランティア参加が徐々に広がり、2001年に現在の場所にお店を移転してからは業績も伸び、2021年4月25日で活動24年目を迎えます。

チャリティショップでは、寄付された品物はそれを購入してくださった新しい持ち主の手に渡ります。それによって、その品物がゴミにならずもう一度活用されていきます。この仕組みが可能になるためには、寄付者だけでなく、ショップ運営に参加するボランティアや会員、お客さまという存在のどれ1つが欠けても成り立ちません。だからこそ、お店に出す品物は何でもいいわけではなく、手にする人が喜んでくれるだろうかという点を考えて選定する必要があります。そこで、ご寄付の品物をいただく時には状態の良いものをと選別をお願いしています。

海外と被災地~直接支援で自立の実現へ

活動10年目を迎える頃、WE21厚木のメンバーは、自分たちの支援のやり方に疑問を持つようになったと言います。「お金を出し続けることが本当に支援先のためになっているのか」、と。そして、仕事による収入を得て生活の自立支援を目指すことが大事と考え、フェアトレード(※2)に取り組み始めました。そして、10年の区切りに、コーヒー・紅茶・手芸品を公平な価格で買い取る支援を始めます。

「WEショップ厚木」にある、NGOから仕入れたフェアトレード商品コーナーにはカレーやコーヒー、紅茶など、気軽に買える食品が並んでいます。乳化剤不使用のチョコレートは秋冬限定の取り扱いで、目玉商品の1つです。

フェアトレード商品のコーナー

団体名にある「WE」には、女性たちが力をつけていく(Women’s Empowerment)という意味があります。フェアトレード(※2)も「WEトレード」と名付けて展開しています。この23年間、支援先から学ぶことも多々あり、WE21厚木の活動を通じて、自分たち自身も力をつけていかないといけないという思いが強くなったそうです。

そして、もう1つの支援の柱となっている「2011.3.11東日本大震災被災地支援」も今年で10年目を迎えます。「WEショップ厚木」の収益や店頭募金を現地のNPO団体に支援金として送ることに始まり、フェアトレードの枠組みを応用し、支援先の宮城県気仙沼の会社から、直接海産物を仕入れて販売しています。その会社を経営するご家族も津波で自宅や工場を流された方です。日常的に海産物を購入しお店で皆さんにご紹介、販売することで、東北の人たちを神奈川から応援しています。

レジカウンター前にある「気仙沼直送 海の幸コーナー」には、手軽に食べられる昆布やわかめから、立派な煮干し、気仙沼特産のフカヒレを贅沢に使用したスープ、茶碗蒸しの素など、さまざまな海産物が取り揃えられています。

フェアトレードをきっかけに、小川さんをはじめとするWE21厚木の皆さんは新しい支援のあり方をみつけました。「生産者支援で自立の実現へ」これが現在のWE21厚木のもうひとつの支援です。

笑顔が集うお店は善意での支援

23年間チャリティショップ「WEショップ厚木」を拠点に活動を続けてきましたが、2020年は新型コロナウイルス感染症の拡大で臨時休業を余儀なくされ、店頭での直接寄付が制限されてしまいました。これまで毎年支援先NGOメンバーを招いて「WE講座」を実施してきましたが、こちらもコロナ禍のため休止に。ニュースレターで現状報告もしていますが、顔と顔が見えることで信頼関係を築いてきたスタディツアーや勉強会とは伝わり方の違いもあり、課題が残っています。

WEショップのリユース品は全て善意の寄付で構成されていて、買い取りは一切ありません。レジや接客は主にボランティアで、有償スタッフはわずかです。支援金を生み出し、必要経費を負担しながら継続的な活動を続けていくためにもお客さまは大切な存在です。活動目的に共感した寄付者、お客さま、ボランティア、スタッフ間に交流が生まれることで資源が循環していきます。こうして、チャリティショップに集う「仲間」が増えていくことが活動の持続につながります。

WEショップは、23年の間に居心地の良い場所に育ちました。楽しくおしゃべりして、笑顔にあふれ、笑い声が聞こえます。小川さんは、寄付者やお客さま、ボランティアやスタッフ等いろいろな立場の人たちがお互いに「ありがとう」の感謝の言葉を交わす、そんなチャリティショップの光景は貴重であると語ります。そして「効率は考えず善意のみで運営される」というWE21厚木ならではのやり方を「未来の希望」として次の担い手につなぎたいそうです。コロナ禍のような予期せぬ事態が起きても、この先もできる限りこの活動を続け、人と人が顔を合わせて笑って話すことができる心地よい居場所を提供したいと語りました。

寄付の方法は物・お金・時間

WE21厚木では「物・お金・時間」の3つを寄付することができ、支援したい人が自分に合った方法で参加しやすいことが特徴です。寄付されるリユース品と、購入者、時間を提供するボランティアの存在がチャリティショップ経営を支えています。現金でのご寄付は、直接支援が必要なところに届けることができます。このように、物品とお金の寄付を常に積極的に呼びかけています。

お店では季節問わず衣類や食器類など食品以外の実用品の寄付を受け付けています。ホームページやチラシで寄付上の注意喚起を行っていますが、店頭商品として条件を満たさない寄付品も多く見られるのが実状です。小川さんいわく、寄付品の問い合わせに対しては「ご本人が大切なお友達にその品物をさしあげられるかどうか」を1つの指標とお願いしているそうです。

寄付金については会員として年会費を払う方法、団体への直接寄付、募金活動への参加などがあります。寄付金は、ネパールでの若者教育支援やカンボジア等での女性や子どもたちへの支援に充てられるほか、東北を含めた国内被災地支援等に直接役立てられています。同時に、WEショップの販売収益から支援金が生み出されるので、リユース品を購入するだけで支援活動に協力できますし、未使用の切手やはがき、書き損じはがきの寄付も受け付けています。

支援者が安心して善意で寄付をしてもらえるように、団体情報も積極的に発信し続けている小川さん。その中でも、信用を得るために会計報告の重要性を感じていて会計の明瞭化には特に力を入れています。ぜひ1度ホームページを閲覧して、チャリティショップ「WEショップ厚木」に足を運んでみてください。

注釈
※1 オックスファム・インターナショナルは、1942年にイギリスで創設された世界的なNGOです。世界でいち早くフェアトレード活動を始めたり、先進国の消費のあり方に変化を起こそうと活動するなど、途上国と先進国のフェアな関係を求める活動を続けています。
※2 フェアトレードとは、開発途上国の原料や製品を適正価格で持続的に購入することで、自然環境に配慮し、労働環境をはじめとする生活改善と自立を目指す、公平で公正な貿易のしくみです。

寄付・活動についてのお問い合わせ

認定特定非営利活動法人 WE21ジャパン厚木(WEショップ厚木1号店)
〒243-0015 神奈川県厚木市中町3-18-5
TEL/ FAX 046-296-2555 
(営業時間:平日10:00~16:30 定休日:日曜・祝日(夏季・年末年始) 担当:小川)
e-mail we21atsugi@mou.ne.jp
URL http://www.weatugi.com

(取材/文・写真 小澤貴恵)

小澤貴恵 プロフィール

神奈川県生まれ、神奈川県育ちで、地元が大好き。救援活動でNPO法人という言葉は聞いたことがあってもくわしく知らなかった私が、地元で頑張っている団体を応援する気持ちで記事を執筆しました。