商店街の本屋で不登校支援・NPO法人 アンガージュマン・よこすか

「アンガージュマン・よこすか」は、主に不登校の子供たちの学習・就労支援を行う地域密着型のNPO法人です。今回は理事長である島田徳隆さんに事業の内容や活動を続ける中で気づいた社会への思いなどについてお話を聞きました。
島田徳隆さん2004年、アンガージュマン・よこすかは、当時としては珍しい学習支援型フリースペースを備えて発足しました。その当時、島田さんは東京で通信制高校のスタッフとして働いていましたが、不登校の子供たちと付き合うようになり「不登校は選択肢である」と考えるようになりました。そんな時ボランティアとして参加したアンガージュマンの活動に共感し、スタッフとして参加することに決めたそうです。
島田さんは、アンガージュマンの目標についてこう語ります。
「『アンガージュマン』にはフランス語で『社会参加』という意味があります。私たちは子供たちに、形はどうであれ、社会に参加してほしいと思っています。それは学校に限定されず、社会全体との関わりも含めてです。例えば中学生の子は『高校に入らなければ』というプレッシャーがあると思います。けれども、高校以外の可能性も開いているかもしれません。その可能性に向かって挑戦し、ひとりひとりが『その子らしい生き方』をしてくれることが、私たちの一番の目標です」
「アンガージュマン・よこすか」は、京浜急行・横須賀中央駅から徒歩10分、上町商店街にある『はるかぜ書店』の中で活動しています。こじんまりとした店内には本のほかに雑貨が並び、とても落ち着いた雰囲気でした。
「書店とNPO法人」という不思議な取り合わせには、商店街の空き店舗問題が関係しています。神奈川県と横須賀市は、空き店舗に出店する事業者に対して補助を出しています。そこでアンガージュマンは、商店街の空き店舗に自ら書店を出店して運営を行い、一方で、そこを学習・就労支援を行うスペースとしても活用しているのです。
NPOと書店を同じ場所で運営することは、アンガージュマンに来る子供たちにも大きな利点があります。アンガージュマンでは就労支援の一環として、将来就職を希望する子供に書店の店員を任せているのです。驚くことに、島田さんをはじめとした理事は書店の運営には関与しておらず、書店の経営を行う人も基本的に経験はないそうです。「資格より資質を大事にしている」と島田さんは言います。
また、商店街の中に活動の場を置くことで、商店街の人々との交流が生まれます。イベントに参加するのはもちろん、アンガージュマンの場合は学習支援において、商店街の人に講師をやってもらうこともあるそうです。
「子供たちにとって、学校外で信頼できる大人と出会うことは勉強と同じくらい大事です。その点アンガージュマン・よこすかでの学びは、講師である大人とじっくり話すことができる機会。そんな時、相手が単なる『講師』ではなく『商店街の人』という認識の方が子供にとって関わりやすかったりします」
特に、横須賀市内、地元の不登校の子供たちにとって、そうした関わりを作ることはとても重要です。島田さんは、活動を行う横須賀市の現状についてこう話しました。
「原因はまだ分かりませんが、全国の不登校生の出現率が2.7%であるのに対して横須賀市は4%と比較的高くなっています。加えて横須賀市では、市内小中学校の不登校生550人のうち、1割ほどしかNPO等の支援につながっていないという問題もあります。学校に行かなくなった後、ほとんどの子が社会とのつながりがないという状態です。また、支援を受けていても、つながりが進学のタイミングで途切れてしまうこともあります。単純に進学しただけでは、解決が先送りになってしまうんです。」
地域から社会とのつながりを少しでも子どもたちに届けたい。孤立してしまいそうな子供たちを支えるため、アンガージュマンでは、商店街ぐるみでつながりを作ることができるよう、活動を続けています。
(取材・文:舩津 泉)

寄附・活動についてのお問合せ

アンガージュマンでは、はるかぜ書店で本を買うという形で、外部から就労支援の参加を受け付けています。
オンライン書店『e-hon』でmy書店を『はるかぜ書店』に登録の上利用すると、書店の売上が就労支援店舗『はるかぜ書店』の運営に使われます。
http://www.e-hon.ne.jp/bec/EB/Top
特定非営利活動法人 アンガージュマン・よこすか
〒238-0017
神奈川県横須賀市上町2-4
フリースペース開放時間 午前10時~午後4時
e-mail info@npoey.com
HP http://npoey.com/
ブログ http://blog.canpan.info/engagement/

舩津 泉(ふなつ いずみ)プロフィール

1995年