"ふらっと立ち寄れる"地域のオアシスでコミュニティを元気にする・NPO法人 ふらっとステーション・ドリーム

ふらっとステーション・ドリーム2000年以降、続々と各地に開業している「コミュニティカフェ」。 空き家や空き地活用の一環として、あるいは薄れていく地域コミュニティのきずなを活性化するためなど、目的はさまざまです。
一方で、経営面の苦境から、廃業する施設も少なくありません。成功モデルケースとして、行政機関や大手企業からも見学者が多く訪れているというコミュニティカフェ「ふらっとステーション・ドリーム」(横浜市戸塚区深谷町)のサロン事業について紹介します。

すべては「住民たちの手」によってつくられた

「ふらっとステーション・ドリーム」のカフェは2005年12月にオープン、2008年3月に運営団体がNPO法人として認証されました。地域の高齢者支援団体「ドリーム地域給食の会」「NPO法人ふれあいドリーム」「NPO法人いこいの家 夢みん」の3団体が中心となって開設にこぎつけたのです。
カフェの食事をつくるボランティアスタッフこのカフェが必要とされた背景には、住民の高齢化による1人暮らし世帯の増加という地域課題がありました。
「ふらっとステーション・ドリーム」のある「ドリームハイツ」は1972年から74年にかけて県・市住宅供給公社が分譲した集合住宅です。
1964年に開園した遊園地「横浜ドリームランド」(2002年に閉園)に隣接し、分譲時はJR大船駅に通じるモノレールが開通するという触れ込みで売り出されましたが、設備の不備などでその計画が実行されることはありませんでした。
最寄り駅からバスで25分、公共施設や医療機関がほとんどないという「陸の孤島」に住むことを余儀なくされた入居者たちは、幼稚園や保育園をはじめ、各支援団体など必要なものを自らの手で作り上げてきたのです。
子育て世代を中心とした住民が入居してから40年あまり。2014年の入居者データによると、2,270世帯4,670人のうち、一人暮らしは553世帯で、高齢化率は49%となっています。
「ふらっとステーション・ドリーム」は「高齢化による不自由さ、心の寂しさ、不安を解消できるような交流や情報収集・発信の場がほしい」という住民自身が開設した拠点。入居者のライフステージの変化に伴って必要な施設を作ってきたドリームハイツの「住民による住民のための」支援団体がここにまた、誕生したのでした。

来る人も働く人も“楽しめるサロン”に

ふらっとステーション・ドリーム自慢の日替わりランチ(600円)
ふらっとステーション・ドリーム自慢の日替わりランチ(600円)

現在、コミュニティカフェ「ふらっとステーション・ドリーム」の経営を支えているのが、ランチ・喫茶を提供するサロン事業です。ただでさえ「高開業率・高廃業率」といわれている飲食業。それをNPO団体が運営し、10年以上も継続しています。その基盤はどのようにしてつくられてきたのでしょうか。
サロンでは、月曜から土曜日の10時から17時、喫茶・ランチを提供。年間約16500人が訪れ、ランチは約7000食を販売しています。約30席ある客席は常時にぎやかで、手作りの食や温かいお茶を囲んで話が弾んでいます。
その運営を支えているのが、約30人のボランティアスタッフです。メンバーは地域に住む主婦で、調理や接客だけでなく、食材の買い出しなどもスタッフが行います。
「立ち上げ当初はスタッフ間でのもめごとや、接客に対するお客様からのクレームもありましたが、今は皆無。何かあったら、その場でお互いの意見を言い、納得し合うことで解決してきました」と話すのはボランティアのチーフ・島崎共子さん。皆が働きやすい仕組みと雰囲気づくりが功を奏し、スタッフの多くが長年参加しています。
また、料理は栄養面だけでなく、おいしさにもこだわっています。「ここには一人暮らしの高齢者や引きこもりがちな方も食事にきます。おいしくなかったら、きっと楽しみが半減しちゃいますよね」と、島崎さんは「一口の味わいが訪れた人の気持ちを幸せにする」ことを考えながら、毎日の献立を計画しているのです。
その言葉通り、取材日のランチメニューは「かぼちゃのコロッケ」「柿入りサラダ」など。旬の食材を使い、おもてなしの心を感じさせる味わいでした。

継続するためには、次の担い手が必要

代表の前田利昭さん(右)とボランティアチーフの島崎共子さん
代表の前田利昭さん(右)とボランティアチーフの島崎共子さん

代表の前田利昭さんは「ここは団体名の通り、人と人とがフラットな関係を築けています。上下関係は一切ありません。何よりスタッフが楽しんで働いているのが長続きの秘訣かな」と話します。
また、今後の課題は、住民の高齢化が進む中、次のボランティアスタッフの担い手がいないこと。「60代以下の住民にどう引き継いでいくかが課題です」と語りました。
サロンで前田さん、島崎さんが話している最中に、3歳ぐらいの子どもが席につきました。すると2人はその様子を見ながら「テーブルまで遠いから、子ども用のクッションが必要だ」とすぐに気づき、改善しようと話し合うきめ細やかさをみせました。
こうして日々訪れる多様な人たちのニーズに気づき、改善し続ける組織の団結力と個々のモチベーションの高さが、小さなコミュニティカフェに長年多くの人たちを引きつけているのでしょう。
「ふらっとステーション・ドリーム」では、正会員(年会費3,000円)・準会員(年会費2,000円)・賛助会員(年会費個人2000円・団体10,000円)の募集のほか、施設内にギャラリーや販売スペースを設けて貸し出すなどしています。前田さんは「運営資金を確保する上で、会員になってくれた方、家庭菜園で栽培した野菜を提供をしてくださる地域住民の方には感謝の気持ちでいっぱいです。もちろん会員でなくとも、飲食やご自身のスキルを披露する場としても気軽にぜひ活用いただきたい」と施設利用を積極的に呼びかけています。
※参考
大分大学福祉科学研究センター「コミュニティカフェの実態に関する調査結果」(2011年)
http://www.hwrc.oita-u.ac.jp/publication/file/Text_2011_2.pdf
(取材・文責:福嶋聡美)

活動・寄付についてのお問合せ

NPO法人 ふらっとステーション・ドリーム

〒245-0067 神奈川県横浜市戸塚区深谷町1411-5
開所時間:月~土曜日 10:00~17:00
日曜日 12:00~17:00※サロン営業はありません
電話/FAX:045-307-3558
E-MAIL:furatto-std@river.ocn.ne.jp
詳細:https://www.sawayakazaidan.or.jp/ibasyo/case/03kanto/furatto.html

福嶋聡美 プロフィール

海外に数年移住したことはあれど、日本国内では常に神奈川県在住。
ハマっ子を売りに生きてきましたが、近ごろ横浜情報にうとい自分に気づき、反省しています。PRコンサルタント、フリーライターとして、何らか神奈川県に貢献したいと日々活動中です。