日本は「思いやり後進国」?途上国との学びあいで平和を築く・認定NPO法人 地球市民ACTかながわ/TPAK

「私たち日本人が忘れた『共に支えあう思いやりの心』を、アジアの途上国の方々は教えてくれる」。認定特定非営利活動法人地球市民「ACTかながわ/TPAK」(横浜市中区本牧原3、以下TPAK)事務局長の伊吾田善行さん(41)は「日本人が途上国の人々から学ぶことは多い」と話します。途上国支援が一方通行・上から目線の支援にならないため、伊吾田さん自身が留意されていることについて、お話をうかがいました。

TPAKとは

TPAKの支援で教育を受けたタイ北部の子どもたち
TPAKの支援で教育を受けたタイ北部の子どもたち

TPAKは、 タイ・ミャンマー・インドの少数民族と、農村部の子ども、女性達を支援する国際協力NGOです。
活動を始めたのは1993年。代表理事の近田真知子さんたち3人が、タイ中部アユタヤにある巨大な児童養護施設(僧院孤児院)で、国籍のない2000人の山岳少数民族の子ども達と出会ったことがきっかけでした。
施設の環境は劣悪で、病気にさいなまれる子ども達を食べさせるのに精一杯。子ども達は国籍がないため、政府からの支援を受けられず、貧困、麻薬、エイズ、人身売買など、タイの社会問題の被害者となっていました。
当時同年代の子どもを育てていた近田さんは、日本で暮らす自分の子どもとの環境の差に衝撃を受けます。「国が何もしてくれないのなら国を越えた支援が必要だ!」。こうした思いから活動が始まりました。

海外支援活動

インドの女性支援
TPAKはタイ・ミャンマー・インドで、それぞれの地域の社会問題を解決するため、現地のニーズに合わせたプログラムを展開しています。
例えば、インド北部では男尊女卑の意識が根強く残っています。例えば、インド北部では男尊女卑の意識が根強く残っています。インド国家犯罪統計局の2016年発表のデータによると、 レイプ事件は、2015年の34,651件から2016年の38,947件へ、12.4ポイントの増加が報告されているなど、性暴力の厳罰化をしても効果が上がらない状況が報告されています。
https://www.dailyo.in/variety/ncrb-data-2016-crimes-against-women-human-trafficking-cyber-crime/story/1/20867.html

TPAK事務局長の伊吾田善行さん
TPAK事務局長の伊吾田善行さん

こうした状況を変えるため、2014年から独立行政法人国際協力機構(JICA)草の根技術協力事業として「ジェンダーによる暴力抑止プログラムとセーフティネット構築プロジェクト」を進めています。
男女両方にジェンダー教育を行うほか、男女のリーダー育成に取り組んでいます。村の中学校でジェンダー平等や家庭内暴力(DV)をテーマに「ポスターコンテスト・クイズ大会」を行い、多くの応募を集めました。
同校の校長からは「ジェンダー平等の授業を学校のカリキュラムに取り入れたい」という声もあるといい、ジェンダー平等に関する理解が少しずつ広まっているようです。
こうした海外での支援プログラムは25年間に及びます。支援を続ける中で最も大きな喜びは「地域の自立を見届けることです」と伊吾田さんは話します。
タイの山岳地帯では、支援を受けて進学した子どもたちが村に帰り、教育・農業・医療・会計など様々な分野で地域の課題解決を担い始めています。伊吾田さんは「国際協力の最終目標は現地の人々が自立して、自分たちの活動が必要なくなることだと思っています。それに一歩近づいたと思えることは一番嬉しいことです。」と笑顔を見せました。

「助け合わないと人間は生きていけない」

一方で、支援地で今の日本に足りないものを学ぶことも多いと言います。TPAKが支援を展開する地域では、知らない人でも家に客として招いて食事を振る舞ったり、外国人であるTPAKACTかながわのメンバーのことを常に気にかけてくれたりするそうです。
伊吾田さんは、そんな現地の思いやりの精神を感じるエピソードを紹介してくれました。「タイの山岳地で暮らす男の子に『なんでそんなに助け合いができるの?」と聞いたことがありました。すると、『だって、人間は助け合わないと生きていけないでしょ」と笑われました。当たり前だけど本質的な考え方だと思いませんか?」

3000人のボランティアと共に「双方向の支え合い」を

あみあみクラブ日本国内では、途上国から学んだ「思いやりの心」を広げようと、年間延べ3000人のボランティアと一緒に様々な活動を行っています。事務局でのボランティア活動や、年間60回以上イベントに出店して、アジアのフェアトレード商品やタイラーメンを販売するなど、幅広い年齢層のボランティアが国際協力活動に参加していることが特徴的です。
その一つが、平均年齢85歳、100人以上のメンバーで構成される「あみあみクラブ」です。メンバーはアクリル毛糸でたわしを編み、それを神奈川県などの青年海外協力隊・シニアボランティア・NGOが世界の途上地域に届けます。
これまでに約4万個のアクリルたわしを、世界36の国と地域に届けました。アクリルたわしを使えば洗剤を使わずにある程度汚れを落とすことができるため、現地の衛生環境改善、ひいては健康改善に役立っています。
さらに、あみあみクラブのメンバーにとっても社会参加の機会となり、生きがいや生活の張りが生まれているそうです。このように、あみあみクラブでは「双方向的な支え合い」が実現しています。

「お気に入りのNPO」を応援する社会に

TPAKが目指す社会とはどんな社会なのでしょうか?伊吾田さんは「市民一人一人がお気に入りのNPOを応援する社会」だと言います。
多くの人は募金をする時、顔の見えない、でも信頼できる大きな組織に募金しがちです。でも実は地域にも課題を解決するNPOはあります。
「地域のNPOを応援すると『自分の寄付、ちゃんと役立ってるの?』と実際に会って確認することができます。こんな、顔が見える支援をできるような社会になれば」と力を込めました。

寄付・ボランティアのお問い合わせ

認定NPO法人 地球市民ACTかながわ/TPAK

代表 近田真知子
電話・FAX番号:045-622-9661
お問い合わせ:http://www.tpak.org/contact
HP: http://www.tpak.org

岩崎真夕 プロフィール

横浜市立大学国際総合科学部2年生。高知県出身。興味を持ったらすぐに飛び込む行動派。座右の銘は「一食入魂」で、食べることが大好き。知識と経験を蓄え、弱者に寄り添うジャーナリストになるのが目標。「よそもの」の視点から、ハマっ子も知らない横浜の魅力を発信したい。